情報担当者のためのQ&A
- Q1.情報モラル教育の進め方
- Q2.有害サイトへの対処
- Q3.卒業式を盛り上げるために
- Q4.全校的に情報教育に取り組むには
Q:情報教育を全校的なものにするために
私の勤務校では、情報教育の実施が学級ごと、学年ごとに著しく不均衡です。
情報教育の必要性や実施ノウハウが、すべての先生の共通認識になっていないことが大きな原因であると感じています。情報教育をその担当者や一部の先生だけのものでなく、全校的なものにしていくためのヒントをいただけないでしょうか。
A:授業のイメージを持つこと、校務の効率化を実感することが重要です
「こんなことができる!」実践イメージを見せよう
全校的な情報教育の取り組みにあたっては、まず、先生方の意識のレベルをそろえていくことが大切です。 情報教育に消極的な先生にもさまざまなタイプがありますが、一番多いと思われるのが、情報教育、もしくは情報機器を活用した教育によって、自分の授業がどう変わるのかというイメージが持てないケースです。
情報機器は決して万能ではありませんが、その活用によって授業の効率が上がったり、子どもたちの関心を引いて理解度を高められるなど、多くのメリットがあります。そこで、そのメリットを生かしたさまざまなパターンの授業を校内の先生に見てもらう場を積極的に作っていきましょう。
明確な目的意識なしに、パソコンなどの情報機器の使い方を講習したところで、それを授業に生かしていくことは困難です。むしろ実際の授業を見て、その中で、情報機器を使用した授業の具体的なイメージをつかんでもらえれば、逆に「これはどうすればいいの?」「あれはどう使えばいい?」と疑問点を投げかけてくるようになります。
「機械好きな一部の先生」 という見方を変えよう
情報教育に前向きでない先生のもう1つのタイプとして、情報機器の活用を、そうしたものが好きな一部の先生がやっていることだと考えているケースがあります。
情報教育を実践されている先生なら、子どもたちが情報機器やインターネットを、まったく先入観なく吸収し、使いこなしていく様子をご覧になっていることでしょう。そうして育まれた子どもたちの力を、学級外、学年外に積極的に見せることも、また有効な手段です。
情報機器やネットワークを生かした学びの成果を見れば、「機械好きな一部の先生が勝手にやっている」というような見方も変わってくるに違いありません。校内への掲示や、学校ホームページへの掲載、各種学校行事での発表など、アピールの手段はいくつも考えられます。
また、こうした授業を受けた子どもたちが、進級などで別の先生の受け持ちとなったとき、そうした授業を求める声を上げてくれるといったこともあります。
同様に、授業参観や保護者会などでの情報機器の活用や、情報教育の成果発表も効果的です。
例えば、修学旅行の事前説明の際に、画像を多用したプレゼンテーション資料を作成し、「修学旅行先では、旅行の時期にもこのように残雪があります」などと説明することで、保護者が準備すべき衣類を直感的に理解できるなど、好評を得ると共にその反響が学校にフィードバックされ、情報機器活用推進の助けとなったこともありました。
こうした、いわばボトムアップの形で、先生方に情報教育を意識してもらうこともできるのです。
やらざるを得ない、やった方が助かる環境作り
ここまでの工夫や取り組みで、かなりの先生方を前向きな姿勢に変えられると思います。
しかし、多忙な校務に追われる先生方だけに、自主性に期待するだけでなく、必然的に情報機器の活用につながっていくような環境作りを考えなくてはならないケースも出てくるでしょう。
そのための方策の1つが、校務へのパソコン利用です。報告書や成績表の作成にパソコンが役立ち、かつ、それによって校務の効率が大幅にアップするような仕組みを、目に見える形で提供するのです。
例えば、これまで手書きで作成していた資料でも簡単に作れるようなフォームを用意し、校内サーバに公開しておいて活用を呼びかければ、これを使った先生とそうでない先生の間でクチコミ的な情報の交換が行われ、より自然な形で利用を促していくことができるでしょう。
同時に配慮したいのは、情報機器の活用が楽をするためだけのものではなく、その結果として生まれた余力で子どもたちのために実にさまざまなことができるという具体例を併せて提示していくことです。「楽をするため」というと、非難されたり、情報機器から回避する言い訳に使われたりすることもあります。しかし、それが子どもたちのためになるという道筋を示すことで、その意義がより明確に意識されるようになるのです。
もう1つの方法は、全校に及ぶ学年ごとのカリキュラム策定です。本校では、情報機器活用と情報モラルの2つの面で、学年ごとにクリアすべき内容を明確化しています(末尾参照)。これをこなさなければ次の学年の担任からのクレームとなるので、取り組みの推進力にもなります。この2つの要素を下敷きに学年ごとの「情報リテラシー構想」をまとめ、実践計画につなげています。
信頼を勝ち取り、自立を促すために
公式にせよ非公式にせよ、情報教育担当というポジションは「機械が好きな便利屋さん」と思われがちです。校内の先生方が情報教育を進めていく上で必要なサポートは提供したいものの、ささいなトラブルに逐一対応していたのでは自分の授業や校務にも影響しますし、先生方の「人頼み」な姿勢がいつまでも改まらないことにもつながります。
そこで、よく対応を求められる質問に関しては、その手順をシート化し、掲示しておくことをおすすめします。初回の質問時には、そのシートを元に丁寧に対応し、次回以降の同じ質問には、シートを使って自己解決してもらいます。これにより、一人ひとりの先生方が自立した情報教育の実践者になることを目指すのです。
情報教育で扱うテーマは、情報モラルや携帯電話の問題など今日的なものが多く、その取り扱いの是非についてもまだまだ意見が分かれています。そうしたものに取り組むにあたり、単なる技術的なサポートだけでなく、取り扱いの意義や問題発生時の対処などについても検討し、情報を共有する工夫をしていくことが大切です。
こうした面をおろそかにしないことが、単なる「機械屋」でなく、情報教育という新しいテーマに取り組む上でのパートナーとして、信頼を勝ち取ることにつながっていくことでしょう。
(佐和伸明先生・談/文責・編集部)
柏市立旭東小学校の学年別進度表・サンプル
佐和伸明先生が在籍する旭東小学校で取り組んでいる「学年別進度表」の項目例です。ぜひ参考にしてみてください。学年ごとに取り組むべき情報機器活用と情報モラルが一覧表にまとめられています。
機器とモラルをそれぞれ柱にしているのは、スキルに偏った授業になるのを避け、手段としての情報機器と、身につける目標としての情報モラルを共に意識してもらうため、とのことです。
学年別進度表(Excel)/shindo.xls(25KB)