いまさら聞けないデータ活用のすべて
「ビッグデータ」や「IoT」といった言葉が注目され「データをビジネスに有効活用し、企業の成長を加速させよう」という声を多く聞くようになりました。データ需要の高まりと共に、さまざまな業種でのビッグデータは新たなビジネスの重要な資産となっています。
しかし、これまで全く馴染みのなかった方が、いきなり「ビッグデータの活用」「データをビジネスチャンスに」と言われても今まで通りのビジネスをすぐに変えることはできません。
今回は、ビジネスチャンスに繋がるデータを活用するにはどのようにデータを扱うのが良いのか、実際のデータ活用で成功した例などわかりやすくご紹介していきます。
BIツール完全攻略ガイド
データの収集、蓄積、分析を迅速に行い、意思決定をサポートするために開発されたBIツール。
本資料ではそんな「BIツール」を完全に理解するための手引き書として、具体的な機能や利用シーン、活用事例などを1冊にまとめました。ぜひご活用ください。
データ活用とは
まず、そもそもデータ活用とは何なのでしょうか?
なぜ重視されるようになったのでしょうか。
総務省の「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究(2020)」では、ビジネスでデータを活用している企業が半数を超えました。ビックデータを社内で保有する大企業だけでなく、中小企業もサービスの開発や組織改革などの目的でデータ活用を行っています。
現代ではスマートフォンが完全に普及し、消費者はいつでも情報を検索、発信できるようになりました。日々トレンドは変わり、情報のスピードの違いが企業の成長率に如実な差となって現れ始めたといえます。
まずは、データ活用の必要性と同じような単語としてよく聞く『データ分析』の違いと合わせてご紹介致します。
データ活用の必要性
一般的にデータと呼ばれて、会社に蓄積されているのは数字や記号です。相関関係が示されているわけではなく、ただ事実のみの情報が蓄積されています。
例えば、コンビニの例で考えてみましょう。レジを通すたびに、ポイントカードなどと紐付いて本部には「年齢層」「性別」「地域」「頻度」「購入品」などのデータが貯まっていきます。
そのデータを、分析しマーケティングに活用すればその地区に好まれる製品をポップを作成し売り出すことで、売上に繋げていくことが可能になります。全国的なビックデータも活用できれば、商品開発の重要なヒントにもなりますよね。
マーケティング部門だけでなく、仕入れの営業担当や商品管理のタイミングでも、在庫の回転率やトレンドが数字で分かれば素早く対応できます。
このように、データを様々な視点で分析し、ビジネスに繋げていくことをデータ活用と言います。
データ活用は効率良く企業が売上を伸ばすために重要なのです。
データ活用とデータ分析
データ活用と共に良く聞く言葉としてデータ分析があげられます。大前提として、データ活用のベースとなるのが「データ分析」となります。
データは先ほど説明したとおり、事実の集合体であり、数字や記号で表されます。このままだと、データの活用を行うときにどの数値を見れば良いのかが分からず、莫大な時間がかかってしまいます。
たとえば、売上の合計金額で最も高い商品Aという商品が一番売れていると考えてしまいがちですが、
『単価は安いが、商品Bが最も個数が売れている』
『商品Bを買うときに商品Cも同時に買われることが多い』
『Cは単体では売れないが粗利が高い』
などと数字を細かく分析していくとどうでしょうか。売上に繋がる商品が見えてきます。
このように、データ分析はデータ活用を行うために、因果関係や異常値、数字の変化を切り分け理解することなのです。
データ活用とデータ分析の必要とされるスキルも異なります。そのため、専門性の高いデータ分析はITツールに任せ、自分はデータ活用に注力する、と言った活動が生産性向上に相応しいと言われています。
<データ分析に必要なスキル>
- 専門的な統計学の知識
- 分析手法の理屈・やり方
- データの加工や分析作業方法
<データ活用に必要なスキル>
- インプットの量・経験則
- マーケティングスキル
次に、データ活用を行う事で、ビジネスでどのようなメリットがあるのかをご紹介致します。
ビジネスでデータ活用をするメリット
活用するメリットは主に「迅速な状況把握」「ビジネスの課題やチャンスに気づける」という点が挙げられます。
ひとつずつくわしく見てきましょう。
現状把握にかかる時間が減り、迅速な経営判断が目指せる
たとえば、売上が落ち込んでしまった時、原因を究明することに時間を取られてしまうと、さらに対応が後手に回ってしまいます。
データ可視化を行えば、原因や取るべき対策までもすぐに分かります。また、データ可視化を行うツールの中でもBIツール(ビジネス・インテリジェンスツール)だと、データを自由に組み合わせ、様々な角度から分析することができます。
現状をリアルタイムで把握し、それを根拠とした具体的な情報を報告することで、経験や勘に頼らない素早い現状に見合った施策を提供できるようになります。
ビジネスの課題や事業拡大の気づきが得られる
ビッグデータに含まれる様々なデータ同士の関係性を見つけ出すことで、抱えている課題解決や新たなビジネスのヒントになる場合がありますが、データは切り取る場所や組み合わせる指標によって気づきが異なるので、データ分析は難しいとも言われています。
また、データが可視化されると、数字の変化の原因や傾向が分かるため、着地予測が付きやすくなります。いままで肌感覚だった回転数と掛け合わせた在庫管理など、数字で見るだけでは分からなかった未来のデータに気がつくことも容易です。多様な観点から統計的に見られるため、常にデータを根拠に積極的で先回りした施策が打てます。
たとえば、閲覧履歴から、訪れた人があるページを他のページより長く閲覧していた場合、そのページに注目したくなるようなデータがあると予測できます。他にも、年齢層や性別、来客字間を割り出して顧客にとって最も訴求ポイントになるデザインや広告費の集中投下など、新たなマーケティング戦略を練ることができます。
ビックデータをしっかりと分析することで、短所はカバーし長所は伸ばす施策が行いやすくなります。
データ活用における課題とは
ビックデータ活用、データドリブンというような単語は最近になって注目され始めた言葉です。そのため、テクノロジー、ビジネス部門ともに、データの分析およびその適切な活用ができる人材が限られています。
他にも、データ収集をしている企業の場合、ユーザーからデータを集めること自体が目的となってしまい、その先のステップまで把握することができないこともあります。また、データ量や種類が多すぎるために有効なデータを見つけられず、社内のビジネスに展開することができなかったりと、集めたデータを使えるように分析するのは非常に難しいのです。
もちろん社外秘の製品情報や個人情報など、セキュリティの担保も大きな課題となります。
データの保管場所など、課題を挙げ始めたらキリがありません。
それらの課題を解決するために、データ活用ツールやデータ可視化ツール、レポートツールを兼ね備えたBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールが存在しています。データ分析に時間を掛けて、売上に繋がるデータ活用まで手が回らなくなるよりも、分析はITに任せて生産性を上げていくという方法は効率的です。
データ活用のためのツールについては以下の記事も合わせてご覧ください。
データ活用の正しい方法
データ活用は思いつきでいきなり始めても、もちろん効果はありません。ステップを踏んで、社内に蓄積されたを使えるものにしてから行う必要があります。
その方法をステップに沿って詳しく紹介していきます。
数字からグラフ等に可視化する
まず、データ活用を行うためには自社外の人や物などのあらゆるデータを「見える化」し、分析する必要があります。「見える化」してわかりやすくまとめることで、今まで見えなかった新たな市場やユーザーのニーズ、経営状況など様々な情報が見えてきます。
データ可視化とは数値データを一目見れば分かる形に変換し、数字から分かる情報の理解を助けることです。見える化とも呼ばれます。
たとえば、Excelの表のような数字の羅列だけでは、その関係性や他の数字と掛け合わせて分析するには多くの時間がかかってしまいます。ビジネスで使うような膨大な情報であればなおさら複雑で活用するのに神経を使う事になるでしょう。
そんなデータをグラフやチャート・イラストでわかりやすく表示することで、データ遷移の傾向などが分かるようになるのがデータ可視化の特徴です。
可視化については以下の記事で詳しくご紹介しています。
可視化したデータを分析する
データ可視化を行えば、原因や取るべき対策までもすぐに分かるため迅速な経営判断に繋がりやすくなります。また、データが可視化されると、数字の変化の傾向が分かるため、着地予測が付きやすくなります。
数字で見るだけでは分からなかった法則も様々な角度でデータを分析することによって見えてきます。「ビジネスに有効活用できるメッセージ」を読み取るには、以下のような点に注意すると良いでしょう。
- 規則性
この条件に合致する時は、良い結果や悪い結果が出ている - 異常値
この部分だけ突出して値が異なる - 因果関係
Aが原因でBという結果が出た - 相関関係
Aの数字の変化に伴い、連動してBが増減している など
分析結果をビジネスに活かすために戦略を立てる
データを分析して課題やビジネスチャンスを読み取ったら、それを元に何を改善するか、どこに注力するかなど、ビジネスを発展させるための戦略を立てます。
マイナスを解消するため、プラスをさらに伸ばすためにはどのような手法を採用したら良いのか、PDCAサイクルを回しながらデータを元に企画していきます。分析したデータを深く掘り下げていけば、自ずと解決策は見つかります。
データに基づく経営判断こそ、失敗することなく売上を伸ばしていけます。
次に実際のデータの活用例を見てみましょう。
業界別のデータ活用例
業界別のデータの活用例をご紹介します。業界、職種ごとによってデータ活用の可能性は無限に広がっています。本記事では以下の5つに分けてご紹介します。
- サービス業
- 製造業
- 人材管理
- 小売業
- 金融業
それでは詳しく見ていきましょう。
サービス業
飲食などのサービス業では、より効率的な店舗運営を行うという上で「来店客数の予測」が必要不可欠です。
各店舗の過去のデータをもとに来店予測を行い、シフトや発注量を決める必要があります。しかし、本当に過去のデータを閲覧するだけで良いのでしょうか?
データ分析ツールを利用した上でデータ活用を行えば、天気や周囲のイベント状況にも対応して余計なコストをさらに減らすことができます。
また、店舗回転率に合わせた内装に変化したり、自店舗だけでなく全国の数字を見比べることで新たな気づきを得ることができます。
製造業
製造業は昔から、経験や技術者の勘が重要な根拠として活用されてきたと言われています。その経験に加えてデータの活用を行うことで、さらに正確で売上の繋がる商品管理、製造管理が可能になります。
たとえば、ECM(エンジニアリングチェーン管理)。ECMとは市場調査、商品企画、基本設計、詳細設計、評価、試作、試験など製品開発に必要な工程をガントチャート的に進める管理方法です。
データ活用を行うために、社内のデータを見える化すれば製造業の開発工程に必要となる、顧客のニーズ、競合他社の製品情報、部品・原材料の入手方法・必要コスト、品質管理、製造の進捗といった情報がすぐに判断材料として手に入ります。
それだけでなく、要望、問合せなどの社内のカスタマーサポートの情報も一元管理することとで開発現場は質の高いエンジニアリングチェーン管理が実現できるようになるのです。
人材管理
人材管理や育成を行う際に、基礎的なタレントプロファイル(人物情報)は労務部門、トレーニング履歴や資格は人材開発部門、人事評価履歴は人事企画部門など、データが点在していることで、包括的なデータ活用の制限が生まれがちです。
そのさまざまなデータを、データ可視化ツールで見える化、統括することでなぜ会社を辞めてしまうのか、リテンション策はどうするかといった人材流用防止の施策に広げていくことができます。
海外では重要な資源である人材データの活用は、ビックデータ時代に必須として、データアナリストを人材部門に置いている企業も少なくないようです。
小売業
小売業界では商品の需給予測を正確にすることが重要です。
季節による需要変動が大きい商品は「在庫切れによる機会損失」や「在庫の保有コスト」が売上に大きく影響するため、精度の高い在庫の管理が求められています。
ビッグデータを活用すれば気温やイベントによる需要の増減などあらゆるパターンを想定した在庫切れを避けつつ在庫のふらつきを避けて保有コストを抑えるなどより正確な対応が取りやすくなります。
こういった受注、発注、在庫、販売、物流などの情報を自社内や取引先などと共有して、原材料や商品の流通の最適化を測る「サプライチェーンマネジメント」は、ビッグデータの活用が特に威力を発揮する分野のひとつです。
あるホームセンターでは売上データ、従業員の行動データ、商品の陳列データを収集し分析することで、店内で顧客単価の高い場所を特定することに成功しました。その場所に従業員を重点的に配置したところ、売上が15%上昇したという事例があります。
金融業
投資や信託など信頼関係で成り立っている金融業はカスタマーサポートが特に重要になっていきます。
たとえば、投資ではデータ管理、顧客行動分析、トレンド把握のデータを蓄積し、データ分析ツールによって予測することで、有意義な投資運用アドバイスを営業員が顧客に行うことができます。
他にも支店に散らばる情報を、一元管理することでスピーディーな対応が可能になり顧客を待たせることがなくなります。
まとめ
データは使い方ひとつで、様々な価値を発揮します。データは現在ではお金よりも価値の高い会社の財産とも言われています。
データ活用に必要なのはデータの分析力だけではありません。分析して得たデータをどのように活用して業務を改善していくかの活用力と発想が重要になっていきます。
自社に眠っているデータをしっかりと把握し、売上に繋げていきましょう。
BIツール完全攻略ガイド
データの収集、蓄積、分析を迅速に行い、意思決定をサポートするために開発されたBIツール。
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