メディアとのつきあい方講座

情報モラル教育を急げ!

第4回 教え込むのではなく自らの気づきをはぐくむ
コンピュータ関連会社での5年間の勤務を経て教職に就いた経験を生かした「情報モラル教育」。

情報モラル教育は
できるだけ早期から

育てたい「情報モラル」等の目標

原先生に見せていただいた、「育てたい『情報モラル』等の目標」。情報活用の実践力に応じた目標が掲げてある。

そして、情報モラル教育は、できるだけ早く始めた方がいいと語る原先生。

「情報活用の実践力に応じた情報モラル教育が必要です。メディアはすでに生活と切り離せない存在ですし、子どもたちは毎日メディアと接しています。ですから、『情報モラル教育なんて低学年のうちはまだ早い』などとのんびり構えていては後手後手に回ってしまいます。子どもたちはとても正義感が強く、自分たちが共感できることならしっかりと身に付けてくれます。低学年には低学年に必要な、高学年には高学年に必要な情報モラル教育のカリキュラムを組む必要があります」

原先生に見せていただいたのは、情報モラルの指導目標。低学年、中学年、高学年と大きく分けて、それぞれに身に付けさせたいことを列記してある。

先生方の意識を
校内で共有

しかし、しっかりしたカリキュラムを整えたとしても、学校自体の取り組みや、教職員の意識の高低、パソコンの得意不得意など、乗り越えなければならないハードルは多い。

「情報モラルに関わる授業を、できるだけ研究授業にすることです。たくさんの先生方の目に触れるよう、オープンな体制にしておく。先生方も情報モラル教育の重要性は十分に認識しています。でも、どうやって子どもたちに教えていけばいいのか、どんな授業を行えば情報モラル教育になるのか分からずに足踏みしている場合も多い。具体的な例示を必要としていたりするんですね。ですから私も、空き時間を利用して積極的にTTに入るなどしています」

情報モラルと言っても、基本は道徳。大切なのは、教師がパソコンを上手に扱えるかどうかではなく、子どもたちにきちんと道徳を教えられるかどうか、だと原先生は言う。

保護者の意識も
高めていきたい

原先生

ホームページ作成の授業では、いきなりパソコンに向かわせるのではなく、まずは紙でレイアウトを決めるよう促すのだと原先生。その中で、徐々に子どもたちが伝えたいことや見出し、写真の配置などが決まっていき、それに応じてさまざまな「気づき」が得られるという。

「パソコンでは切り貼りも簡単にできますけど、紙ではそうもいかないでしょう?そこが狙いなんです」

さらに保護者の意識レベルも問題だ。

「子どもたちは保護者の行動に敏感です。日本レコード協会の方を講師に招いて、音楽CDを通じて著作権について知る授業を行った際にも、保護者がそうと知らずに違法なコピーをしているがどうしたらいいかといった質問も挙がりました。情報モラル教育は受けていないけれど、パソコンは巧みに扱えるという保護者の方が増えています。そういった保護者の啓発も必要ですね」

前任校では、PTAのお母さん方が主催するコンピュータの講習会においてモラルの話をしたと原先生。

「それぞれの家庭で事情は違いますが、掲示板やチャットなどを日常的に利用し、ホームページを開設している子どももいます。私たち教師には目の届かないところで、子どもたちはパソコンに触れている。その子どもたちを守れるのは、やはり保護者の方々なんですよね」

携帯電話の指導は
まず保護者から

今後の課題を伺うと、原先生は携帯電話を挙げた。

「安全のために、と子どもに携帯電話を持たせる家庭が増えています。でも、子どもたちは携帯電話を持つと、すぐにメールをやりとりしたり、インターネットにアクセスしたりできるようになります。問題は、保護者が子どもたちのそうした行為を把握していないことです」
とても便利な道具である携帯電話。しかし、便利であると同時に危険な部分も内包している。学校で買い与えているわけでもない携帯電話について、どこまで受け入れて指導していけばいいのか、正直迷うところだと原先生は言う。

「今受けもっている小学3年生のクラスでは、22人中、7人がすでに携帯電話を所有しています。かと言って、携帯電話を扱う授業を行えば、携帯電話を持っていない子どもたちは間違いなく携帯電話を欲しがるでしょう。ですから、まずは保護者向けの指導をしたいですね」

 

※本文中の情報は、すべて取材時のものです。