情報モラル教育を急げ!
第4回 教え込むのではなく自らの気づきをはぐくむ
コンピュータ関連会社での5年間の勤務を経て教職に就いた経験を生かした「情報モラル教育」。
重要視されているにもかかわらず、学校現場においても、保護者や地域の取り組みとしてもまだまだ立ち遅れている情報モラル教育。どのように推し進め、また広げていけばよいのか、コンピュータ関連会社での5年間の勤務を経て教職に就いた経験を生かし、早くから情報モラル教育に取り組んでこられた原先生にお話を伺った。
情報モラル教育のキモは
タイミングにあり
原香織(はら・かおり)先生
東京都文京区立青柳小学校、3年1組担任。理解ある職場に助けられ、会社勤めをしながら教員免許を取得し、教師へ。一度出勤し、部下に指示を与えてから教育実習に向かい、実習後、再度会社に戻り仕事をこなすといったハードな生活も、子どもたちの笑顔に出会うためと乗り越えた原先生。その笑顔はとびきり魅力的だ。
▼東京都文京区立青柳小学校
児童数269名 鴇田光俊校長
護国寺の緑に囲まれた東京都文京区立青柳(あおやぎ)小学校。床は磨きこまれた板張りの教室だ。
「タイミングよく、その子どもの経験として教えることが一番大切ですね。実体験に基づかない知識を詰め込んでも、子どもたちはそれを血肉にはできません。子どもたちが自ら気づき、悩み、葛藤して、自分たちの力で答えを導き出すことで、初めて身に付くのです」
情報モラル教育に取り組む上で大切なことについて伺うと、原先生はまず、上記のように答えてくれた。最初から「○○するべからず」と禁止事項を教え込むのではなく、まずは子どもたちの自主性に任せる。その上で発生した問題に、教師の側が柔軟に対処する。
「まさに道徳教育と同じですね」
子どもたちの気づきに応じた指導を
たとえばホームページを作る授業。制作を始める前から子どもたちに著作権について教えても、身には付かないと原先生。
「子どもたちがホームページに写真を貼りつけたいと思ったり、文章を引用したいと思ったときに、初めてどうすればいいのか指導するんです。ホームページで公開するような写真を撮るときにはどうすればよいのか、インターネットで調べた事柄を載せるには何に気を付ければよいのか、子どもたちが向き合った場面に応じて指導を行うことが大切なんですね」
前任校の東京都北区立東十条(ひがしじゅうじょう)小学校のホームページには、そうした指導の上で子どもたちが得た「気づき」が、「ホームページを作成するときの3つの約束」として掲載されている。
子どもたち一人ひとりの
実践力の差を埋めるには
原先生の前任校である東京都北区立東十条小学校のホームページに記載されている「ホームページを作成するときの3つの約束」。
タイミングが重要とは言え、子どもたち一人ひとりの迷いや気づきのタイミングは異なる。文章の引用にためらう子どももいれば、どうしてためらうのか分からない子どももいる。それら個々のレベルの差の問題をどう切り分け、指導していくのだろうか。原先生は次のように語ってくれた。
「子どもの迷いのレベルに応じて、私は対処の仕方を変えています。1人の子どもの迷いを、クラス全員の共通意識としてはぐくみたい場合は、いったん全員の手を止めさせて情報モラルの指導にあたる。そうではなく、すでに指導していて繰り返しになってしまう問題や、コンピュータの扱いに詳しい子どもの高度な問題など、個別に解決した方がよいと判断した場合には、授業の流れは止めずに個別に指導する。そうすることで、個人個人の実践力の差を埋めていきたいと考えています」