情報モラル教育を急げ!
第3回 ネット安全教室
保護者主導の情報モラル教育。NPO法人「e-Lunch」の取り組み。
学校ごと学級ごとの
情報教育格差を埋めたい
クイズに答える子どもたち。このクイズは、e-Lunchの会員らが独自に考え作成しているものだという。
子どもたちのフォローに当たる佐藤さん。子どもたちの間のスキルの格差を埋める。
1時間の授業を終えて、e-Lunch理事長の松田直子さんにお話を伺った。
「私たちはもともとパソコン教室で知り合った仲間なんです。講習中に仲良くなったメンバーが、講習を終えてバラバラになっちゃうのはもったいないよね、もっと自分たちで勉強してみたいねと集まって、自主勉強会を開くなどして一種のサークルのように活動してきました」
e-Lunch自体は2000年の秋に設立。サークルでの勉強会や講座を重ねるうち、徐々にデータ入力などの仕事も舞い込むようになってきたと松田さん。フルタイム働くのは無理でも、日中都合のいい時間に自宅でパソコンに向かい、仕事をする。それは主婦の社会参加にもつながる。
また、メンバーの頭にはe-Lunch発足当初から学校での情報教育支援活動ができれば、という考えがあったという。
「メンバーはみな主婦ですから、やはり子どもの学校のことが気になるわけです。ウチの子どものクラスはパソコンを使ってこんな授業をした、とか、隣の学校はこうだ、とか、学校や学級ごとの温度差には敏感なんですね」
教育委員会などに話を通すには、法人化していたほうが何かと便利だということになり、2003年、NPO法人としての認定を受けるに至った。
パソコンを使用した
普段の授業の支援も視野に
記憶媒体について子どもたちに説明する講師役の 山田さん。山田さんはe-Lunchの副理事長。
「佐世保の事件がいろんな意味で引き金になりましたね」
e-Lunchが「ネット安全教室」を始めたのは2004年の7月から。それまではなかなか首を縦に振らなかった教育委員会も、事件以降は主婦による情報教育支援を積極的に後押しするようになってくれたという。
「まずは情報教育に対する先生の温度差を埋めたいですね」
パソコンに興味のない先生が担任であれば、それだけで子どもが学校でパソコンに触れる機会が減る。これでは、パソコンが好きで普段の授業にもどんどん取り入れる先生が担任の子どもと格差が生じてしまう。とは言え、パソコンを苦手に思う先生に、急にパソコンを好きになれと言うのも無理ですよねと松田さん。
「ですから、パソコンを使うような普段の授業の支援もできれば、と考えて、教育委員会へアプローチしている最中なんです」
保護者のための
ネット安全教室を
さらに、家庭ごとの意識格差についても埋めていきたいと松田さん。
「子どもたちはテレビと同じ感覚でパソコンを使いこなしますから、やはり小さいころからの意識づけが必要だと思うんですよね。それには、保護者の方の意識レベルを高めることが重要です」
保護者の場合は、パソコンのスキルを上げることよりも、パソコンの使用によってどんな危険が待ち受けているかを知り、モラル意識を高めることが重要だと松田さんは語る。しかし、保護者を巻き込むには学校側との綿密な連携が不可欠。e-Lunch側で勝手に保護者に働きかけるわけにはいかないし、学校の協力なしに人を集めることはまだ難しい状況でもある。
「実は、県の教育委員会の青少年課の方から相談を受けている最中でして、来年あたり『保護者のためのネット安全教室』が実現できるかもしれません。そうなれば、親同士の横のつながりも強化されるでしょうし、地域社会のつながりも深まる。そして、私たちの母親としての視点もより生きてくると思っています」