メディアとのつきあい方学習実践事例レポート
デジタルカメラとダイレクトプリンタを活用した
「体験!写し方が変われば○○○も変わる」
〜同じ被写体でも写し方によって違った情報が伝わることを学ぶ〜
岡山県・笠岡市立中央小学校
変わった! 子どもの動き、子どもの写真
休み時間をはさんで、一通りのスピーチが終わったところで、筆者が授業のお手伝いをする番が回ってきた。高橋先生からの依頼は、写真を扱うプロという立場から、アングルやフレームの違いが、写真表現にどんな違いをもたらすかを、分かりやすく説明してほしいというもの。
事前に高橋先生をいくつかのアングルで撮影したサンプル写真を用意。今回はローアングルとハイアングルによる写真のイメージの違いと、ズーミングと立ち位置による背景表現の違いについて説明した。少し難しいかなと思える部分もあったが、子どもたちの真剣なまなざしに、きっと何かは伝わるはずだと確信して、短い助教の持ち時間は終了。
この拙い助教に、高橋先生がポイントを押さえた補足をしてくださり、満を持した子どもたちが2回目の撮影へと出発していった。
全校に散った子どもたちを追っていくと、撮り方が全然違う! ある子は床に寝ころび、はたまた階段に上ってアングルを変えたり、モデルの先生にも積極的にポーズの注文をつけているのだ。
「最高の1枚が撮れたよ!」
そう言って戻ってきた子どもたちがプリントアウトした写真を見ると、1回目の写真はすべてが横位置、バストアップだったものが、縦位置有り、各種アングル有りとバリエーション豊かなものに一変している。これには驚かされた。
>>1回目と比べて、アングルの押さえ方がすっかり変化している。
予想を超えた子どもたちの「気づき」
2回目の撮影後のスピーチは、1回目にもまして、いきいきとしたものとなった。何より、スピーチする子どもたちが、自分たちの意図で撮った写真を、誇らしげに説明する姿が印象的だ。
1回目の撮影では、おどけた表情で「ツッコミじょうず」と紹介されていた先生が、今回はハイアングルから大きくデフォルメされて写真に収められ「かわいくなった先生です」と紹介される。アングルを変えることで、子どもたちの目に映る先生の姿も変わったようだ。
また、スピーチに対して出される意見も、
「はくりょくがある、というテーマなら、私だったらローアングルで撮ると思います」
など、しっかりとアングル、フレームに踏み込んだものになっていた。
ここで先生は、授業のタイトルに立ち戻り、伏せ字になっていた「○○○」について、ここには何が入るかな?と問いかける。
子どもたちからは「見た目」「まわりの景色」「伝えたいこと」など、さまざまな意見が出される。これでいい。正解は一つではないのだ。
すでに期待していた目標を十分に達成した感のあるこの授業だったが、高橋先生はその締めくくりに、もうひとつ高いレベルの問いを、子どもたちに投げかけた。
「テレビなどのマスメディアで、今日体験したようなアングルやフレームの使い方が工夫されているものを見たことがあるかな?」
無理かもしれないけれど……という先生の前振りにもかかわらず、子どもたちからは、アニメやCMなどで目にした、印象的な画像の使われ方がいくつもあげられた。子どもたちは今日の体験を、過去の見聞に当てはめて「気づき」を見せてくれたのだ。
今日はまだ、みんながすぐに理解できなくても構わない。けれども、これからいろいろなメディアを見たり聞いたりするときに、それがどんな目的や方法で作られているのかを考えられるようになってほしい、と高橋先生は授業を締めくくった。
単元の流れ
この単元で使用されたワークシート
この単元で利用したワークシートをダウンロードできます。
4年B組担任の高橋伸明先生が作成し、当日子どもたちに配付しました。
岡山県西部に位置する笠岡市にある大規模校。平成13年度に「学校インターネット3」実践研究協力校に指定されている。去る8月には、地域の協力によるネットデイの実施により、校内LANも整備された。児童数769名。