メディアとのつきあい方講座

メディアとのつきあい方学習実践事例レポート

CMや広告の情報特性を学び 氾濫する情報を見極める目を養う
東京都・北区立赤羽台西小学校 野間 俊彦先生

[導入] 自分の購入体験を振り返り発表

「今日は情報のお勉強です。授業が終わる頃には、みんなは情報を見抜く力がつくんだよ」
授業スタートの第一声に、子どもたちは「えっ、本当?」と、すでに興味津々のまなざし。

まずは、「テレビのCMや新聞、雑誌の広告を見て、何か物を買った経験がある人はいますか。家族の人が買ったことでもいいですよ」と質問します。
すると、7割ほどの子どもたちが手をあげました。発表を促すと、
「ゲームを買いました」「家族がテレビ通販で布団を買いました」「お父さんがCMを見て車を買った」
など、さまざまな例を出してくれました。

まず授業の趣旨を説明 ここで私はポケットから財布を取り出して、こう説明します。

「これは先生が雑誌の広告を見て買った財布です。広告には『持っているだけでお金持ちになれる』と書いてあったけど、全然効果はないみたい。財布の中に縫いつけられている石も、よく見るとプラスチックでした。2万円もしたんだけど、これは買わなきゃ良かったと思っています。それからレストランのすごくおいしそうなメニューを見て注文したら、実物はまったく違ってがっかりすることもよくあります。みんなはそうした経験はないかな」

子どもたちからは「ある、ある」という声が上がります。そこで、実際に買ってみての感想を尋ねると、「好きな歌手のCDだから満足した」「ゲームが思ったほどおもしろくなかった」「CMで見た模型は色が塗られていたのできれいだったけど、本物はそれほどかっこよくなかった」などの意見が出ました。

本人だけでなく、家族の体験も振り返るように助言したことで、多くの例を引き出すことができました。また、教師の体験談を交え、かつCMや広告以外の身近な話題にも触れたことで、子どもたちが自分の体験を振り返りやすくなったと思います。

[展開] 消しゴムを商品にCMを制作

班ごとにキャッチコピー作り

ここで、最近、子どもたちの間で流行している消しゴムを取り出して、「これを使って、班ごとに15秒のキャッチフレーズを考えてCMを作ってみよう」と呼びかけます。
この消しゴムはソフトクリームやかき氷をモチーフにしたもので、消しゴム本来の機能より、玩具的要素が強い、いわゆる“ファンシーグッズ”です。

基本的にはその商品を買いたくなるようなキャッチフレーズを作ることを促し、値段については自由に設定してよいというルールにしました。各班にストップウォッチを1個ずつ与え、10分間でキャッチフレーズを作らせます。どの子どもも一生懸命に知恵を絞っている様子。

「食べられませんっていうのは?」「そんなのじゃだめだよ」「使いやすさは入れなくていいの?」
「安く売っていることは?」「売っているお店も紹介しなきゃ」
教室は相談する子どもたちの声で、一気に賑やかになります。
机を元に戻し、各班の代表が前に出て、作ったキャッチフレーズを発表します。

●分解できて、かわいい消しゴムです。

●今なら1個50円、先着100名様には30円でご提供します!

●ジャージー乳でつくった美味しいソフトクリーム。でも本当は消しゴムです。


班の代表がプレゼンテーション なかなかバラエティに富んだ発表となりました。この後、どの班のCMが「買いたいな」と思わせたかを尋ねると、ある班の発表に人気が集中しました。
  その理由を尋ねてみると、「内容がおもしろくて、今にも買いたくなっちゃった」「発表した人がにこやかで、もう一度見てみたいと思った」などの意見。発表した子どもが元気に楽しくプレゼンテーションしたことも大きく影響したようです。