メディアとのつきあい方学習実践事例レポート
CMや広告の情報特性を学び 氾濫する情報を見極める目を養う
東京都・北区立赤羽台西小学校 野間 俊彦先生
加速するメディア社会を生き抜くために
私たち赤羽台西小学校では、平成13年度から情報モラル教育のカリキュラム化に取り組んでいます。
13年度に実施した3回の情報モラル授業では、テーマに《個人情報の保護》 《著作権の保護》 《チェーンメールの対処》の3項目をあげ、子どもたちは情報社会に参画する態度を学んできました。
※このときの授業の模様は、学校のホームページで公開中。
また、今年度(14年度)は、6年生を対象に《悪質なサイトに気をつけよう》というテーマで、“インターネットには意図的に作られた危険な情報があること”“インターネットは自己責任の世界であること”を知り、情報の善悪を判断する力を養うための授業を実施しました。
そのうえで今回、『総合的な学習の時間』を活用して実施するのが、5年生を対象にした《CMにのせられないぞ〜情報を見極める目をもとう〜》と題した授業です。
現在はテレビ、雑誌、インターネットなどメディアの多様化にともなって、子どもたちを取り巻く情報量は飛躍的に増加しています。しかし、そうした溢れんばかりの情報を質の面から見れば、正しいもの、間違ったもの、意図的に作られたもの、不確かなものと実にさまざまです。
今後、ますます加速するであろうメディア社会を子どもたちが生き抜くためには、それらの情報を鵜呑みにするのではなく、各情報について真偽を見極める力を持つ必要があるとの考えが、今回の授業を企画したベースになっています。
問題意識の芽生えを促す
子どもたちは授業の中で、CMやテレビ番組を例に出すと、すぐにのってきますし、CMソングを口ずさんでいる姿もよく見受けます。中には、夏休みの自由研究でテレビCMについて発表した子どももいて、子どもたちのCMに対する関心度はおおむね高いようです。
ただし、CMを見て、自ら商品を購入した経験がある子どもは少ない。事前に「CMを見て実際に買ったことはありますか?」「買ってみてどうでしたか?」といったアンケートを実施したところ、商品については男の子が「ゲームソフト」、女の子は「好きなアーティストのCD」という以外には、ほとんどあがってきませんでした。
また、それらの商品に対しては、多くの子どもたちが満足しているようで、現時点では問題意識はあまり持っていないと考えられます。
しかし、今のうちに情報の内容を見極める力をつけておかなければ、今後の生活において損をしたり、騙されてしまう結果にもつながりかねません。今回の授業では、CMや広告が都合の良い情報を強調していることを気づかせることで、正しい情報モラルについて考えることができるように導く流れを考えました。
ただし、単に受け手だけの立場で学習すると、すべての情報を必要以上に否定的に捉えてしまう心配があります。そこで、簡単なCMを作る活動を入れることで、作り手の立場を経験し、発信者の意図を理解できるように工夫しました。
ITモラルや一般授業にもつながるテーマ
これまでの情報モラルに関する授業は、パソコンやインターネットに関連していたため、すべてパソコン教室で行いましたが、今回は普通教室での授業となりました。授業の中にもインターネットなどITに関する話題はいっさい出てきません。
しかし、今後、インターネットの情報に関するモラル教育を実施するうえで、情報の見極めが必要という点では通底していますから、「以前に勉強したCM情報について振り返ってみよう」と投げかけることができます。ネット上にあふれる情報は、より意図的に発信されたものが多い。それらを判断する際の基礎として、子どもたちにとって身近なCMが、有効な素材になると考えました。
また、5年生は3学期に社会科の情報に関する単元でCMや広告について学びます。さらに6年生の家庭科では消費者教育についてのカリキュラムが準備されており、今回の授業はそれらを学ぶ際のベースになるという意味も持っています。
さて、CMや広告に誘発された購入経験が少ない子どもたちは、どんな反応を見せるのでしょうか。私自身、まったく初めての取り組みだったので、予想どおりに進むのか、不安と期待が入り交じった気持ちで授業を迎えました。
それでは、実際の授業の様子を紹介しながら、授業の成果と課題を考えていきたいと思います。