メディアとのつきあい方学習への招待
第1回 堀田龍也先生に聞く
独立行政法人 メディア教育開発センター研究開発部・助教授
東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座・客員助教授
メディつき
実践のポイント
──メディつき第2弾の最大のウリは簡単な実践例とのことですが、その実践を行う上で重要なことは何ですか?
「ポイントは、知識と体験の循環です。メディアの特性は、簡単には教え込むことができないんですね。光や影の部分を想像することはできても、その先に何があるかまでは見えてこない。子どもたち自らが本やインターネットなどを用いて調べ学習をし、メディア活用の体験を経て、ようやくメディアの特性に気付くのです。体験は知識に裏打ちされている必要があり、知識もまた体験の上に根付くのです」
──知識だけでも、体験だけでもダメなんですね。
「その通りです。そして、メディアでできることとやっていいことを明確に区別して教えること。例えば、合成写真は簡単に作れるんだという体験を通じて、『合成写真は人をだますことになるから作ってはいけない』という結論のみを導き出すのではなく、簡単に作れるからこそどう扱えばいいのかを併せて考えさせることが大切なんですね」
「つきあい方学習」という
耳慣れない言葉
『メディアとのつきあい方学習[実践編]』
今を生きる子どもたちに必要なのは情報機器の「使い方学習」ではなく、メディアとの「つき合い方学習」なのです──。
全国各地の教員による選りすぐりの「メディつき」実践30例を紹介。朝の会でできるミニ活動から長期的な取り組み、さらに一歩進んで学校カリキュラムの作成や保護者への働きかけまで例示した、まさに実践編!
──「つきあい方学習」という言葉が耳に新鮮だったのですが。
「大切なのはメディアの仕組みや操作法を教えることではなく、『このメディアはこういう特性があるからこんな風に楽しむといいよね』とか『こんな風に使うと便利だよね』とか『こんな危険があるから気を付けた方がいいよね』とか、そういったことを教えることが重要なんだと思いつつも、そのことをうまく表現する言葉がなかなか見つからなかったんです。『仕組み学習』ではなく『使い方学習』でもない。では何なのか。『使いこなし方学習』とも違う……と考えるうちに、これは『つきあい方学習だ』と思い立ったんですね」
──何だろう?と考えさせるタイトルですよね。
「そうは言っても『つきあい方学習』という耳慣れない言葉を本のタイトルにするのも……と、当初、この言葉は僕の中では暫定的な扱いだったんです(笑)。でも第1弾を書き進んでいくうちに、これ以上ぴったりはまる言葉はないと思うようになりました。今では、あくまでも主体は自分であるということと、メディアとの距離感をうまく表している言葉を選べたと自負しています」
取材/西尾真澄 撮影/西尾琢郎