メディアとのつきあい方学習実践事例レポート
お互いに影響し合う言葉と写真
「言葉が写真を意味づける。写真が言葉を支える」
〜言葉と写真で伝える学校紹介〜
東京都・お茶の水女子大学附属中学校
1つ1つのグループを制作会社になぞらえる
車のパンフレットにおける巻頭部分が「印象的・心に訴える」、巻中部分が「細部・詳しく」、巻末部分が「バリエーション・その他のポイント」と、宗我部先生に補足していただく。
「こういった要素や構成は、ホームページ作りにも応用できそうだね」と先生。
先生が今後の授業展開について、「企画」「制作」「発表」と板書し、4人ごとのグループを作ったところで1時間目は終了。我々はその日、放課後まで校内外の色々な場面を撮影し、その写真を後日、先生にお送りした。
翌週の2時間目からはPC室へ。
「『○○な』お茶中生活を伝えよう」と題し、前回分けたグループを制作会社にたとえ、企画会議の時間とした。
グループ名ならぬ「社名」を決め、グループのリーダーとなり進捗状況を把握する「社長」を決めることで、生徒たちは自らの責任感を強く感じるようになったようだ、と宗我部先生。
生徒たちは我々が撮った写真を見ながら、どんな紹介にするか、どんな写真を使ったらよいか、分担はどうするかなどを相談。紹介する内容、コンセプトを明確に決めてから写真を選ぶ生徒もいれば、写真を見てからコンセプトを考える生徒もいたという。 企画会議を終えた生徒たちはいよいよ制作開始。制作には「はっぴょう名人Teen's」を使用した。
制作途中に他作品を見て学ぶ
3時間目はひたすら制作の生徒たち。
しかし、その段階での作品のキャッチコピーは、「ゆかいなお茶中」「楽しい部活」など、非常に説明的なものだったという。
そこで宗我部先生は、あらかじめ作成しておいたサンプルページを生徒たちに見せた。キャッチコピーは『新しい学びの朝がはじまる』というもの。生徒たちからは「カッコイイ!」と声が上がり、改めて「キャッチコピーとは何か」ということを再認識。
その段階から、生徒たちのキャッチコピーは数段魅力的に、目を引くものに変わっていったとのこと。確かに、翌週の4時間目に再度取材にお邪魔した際には、
「朝、夢のはじまり」
「未来への見えない道を歩みながら」
「のびのびな人々」
「メリハリ♪授業」
など、思わず続きが気になるようなキャッチコピーが多く見られるようになっていた。
キャッチコピーが決まり、写真の配置を終え、どんな本文を入れると効果的に見せることができるか悩む生徒も増えてきていた4時間目、制作途中の段階で、宗我部先生は生徒たちに手を止めるよう指示。
「これから他社の作品を見て回ってください。他社の良いところを参考にして、自社の作品をより良いものにしましょう」
生徒たちは付箋紙を渡され、自分が参考になると感じた作品には、付箋紙に感想を書き込んでモニターに貼付するよう指示されている。我々も生徒たちに混じって作品を拝見。
と、急遽、作品に関して生徒たちに助言して欲しいと宗我部先生から依頼された。そこで、優れている作品として、写真にキャプションが付けられているもの、写真の選択や配置に流れのあるもの、会社として統一感のあるものを取りあげ、生徒たちに見てもらったところで、4時間目の授業は終了となった。
発表の場はインターネット
5時間目は仕上げと発表の時間となる。
宗我部先生は、「自分たちの伝えたいことと、ホームページを見に来てくれる相手の知りたいことを、いかにつなげるか、ということが、この年齢の生徒たちにはなかなか難しいようです」という。
「キャッチコピー」を工夫することを通して、伝えたいことを意識させる一方、「本文」では、お茶中生だから語れることを織り込むように指導することで、それら2点をつなげていくことができれば、と先生。
普段、写真と言葉とを組み合わせてさまざまな物事を伝える表現に触れている生徒たちに、自ら制作し発信することを通じ、「写真と言葉で伝える」ということの面白さや難しさを学んでほしい、とのこと。
生徒たちの本当の意味での発表の場はインターネット上となる。誰の目に触れるか分からない公の場に生徒たちの作品をアップするにあたって、先生は生徒たちに1つの課題を出すという。
「顔が見えている写真を使っている場合、その生徒の保護者に写真使用の許可を得るための手紙を書かせようと考えています」
これによって、生徒たちは発信責任を感じ、肖像権について考えるきっかけにもなるはずである。
完成した作品は、3月までの間に、お茶の水女子大学附属中学校のホームページにて公開される予定。撮影した我々も驚くような写真の使い方や、素敵な言葉が散りばめられた楽しい作品が多数アップされるはずだ。
教育目標は「自主自律の精神を持ち、広い視野に立って行動する生徒を育成する」。東京都文京区、丸の内線「茗荷谷」駅より徒歩約10分。広大な敷地の中に、お茶の水女子大学、附属高、中、小、幼稚園を擁している。
1997年には創立50周年を迎え、翌年には文部省光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発実銭研究校に指定された。帰国子女教育にも早くから取り組んでいる。生徒数404名。
取材・文/リンカーベル 撮影/齊藤浩・リンカーベル