IT活用講座

「作る」「調べる」2つの出発点からのプレゼン

「作る」「調べる」2つの出発点から取り組むプレゼン
〜「全国プレゼンテーションコンテスト」挑戦校の取り組み〜
広島県・広島大学附属東雲小学校

5年1組 :あるががままの調べではなく、調べを自分のものにしたプレゼン
表現するのは 自分たちの考え

一方、5年1組の社会科の授業だ。ここでも、教室にはエプソンのプロジェクター「EMP-7850」が持ち込まれ、柏木先生が投影した画面に、子どもたちの注目が集まっている。映し出されているのは「日本の米作り」と題されたプレゼンテーションシートだ。

5年1組

これは、同じ社会科の授業で、以前取り組んだもの。外部講師として食糧庁の方を招いての取り組みだったが、このシートにまとめられているのは、講師の方から教わったことそのものではなく、その教わったことを元に、みんなで話し合い、考えたことだったということを、子どもたちに思い起こさせていく。

そう、聞き書きしたことを引き写すのではなく、それを自分なりに咀嚼した、自分の中にあるものを表現する。これはそういう授業なのだ。

プレゼンテーションが終わると、先生は今回の取り組みの目標について黒板に大書きした。
『プレゼンでプレゼント〜おいしい情報で学習したことをお家の方に発表しよう〜』

おいしい情報 それも自分たちの感じるもの

この取り組みで、発表されるテーマは、「コンビニで売れる商品」。

発表されるテーマは「コンビニで売れる商品」

先におさらいした「日本の米作り」と同様、外部講師を活用しているが、こちらは学校近くのコンビニ店の店長だったとのこと。

その話を参考に、時期や立地を考えて、自分たちならコンビニにどういう商品を置くか、そしてそれは本当に売れるのかを、店頭などでのアンケート調査で調べ、再度検討や絞り込みを行うという、本格的な取り組みだ。

教わったことや調べたことを、そのまま発表するのではなく、自分たちで考え、それをさらに試し、検討。そんな取り組みの全体を発表する。

先の2年生とはまた異なる、5年生ならではの、取り組みと発表が期待できそうだ。

発表のために 大切にしたいこと

続いて、『発表のためにたいせつにしたいこと』先生が大きく板書する。

柏木先生

しかしその内容は、先生が教えるのではない。
「さあ、何があるかな?」 「はい!」次々に上がる手。
「大切にしたいこと」は子どもたちの発言の中から紡ぎ出されていく。
「声の大きさ」「姿勢を保つ」「内容が分かりやすいように」……などなど。

これらの発言を受けて、先生がそのポイントをまとめていく。
「内容を分かりやすくするには、どうすればいいかな。そう、まずは伝えたい内容をハッキリさせることが先だな。これが、発表の『要点』なんだね」

そう話す先生の言葉を、すばやく手元のノートに書き留めていく子どもたち。その言葉も、もう自分たちのものであるかのようだった。

発表は クラス一丸で

参観日までの限られた授業時間の中で、全員の力を集めた発表を形にするため、柏木先生は、すでにこれまでの授業で、子どもたちが重ねてきた議論を、いくつかの大まかなパートに分け、タイルに書いて用意してきていた。それらを黒板に貼り付け、子どもたちの合意を取り付ける。

発表はクラス一丸で

「これまでやってきたこと、こういうことでよかったかな? いいかな?」
「それじゃ、この流れで発表していくために、それぞれの部分の中で、自分が担当したいところに、名前タイルを貼っていってください」

子どもたちは次々に席を立ち、黒板に貼られた、発表の流れを示すタイルの前へ向かった。腕組みをして考え込む子。仲良しの友だちと相談する子。それぞれが思い思いの部分に名乗りを上げていく。今日の授業はここまで。今後は、この分担を元にした発表練習が始まる。

◆広島大学附属東雲小学校

広島県公立師範学校附属小学校として明治8年に創立された伝統ある小学校。平成8年度にはコンピュータ教室を完成させ、同12年度には各教室へのコンピュータ設置を終えるなど、情報教育環境の充実にも力を注いでいる。生徒数530名。

取材/西尾琢郎 撮影/大江隆晴
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。