プレゼン指導 ここがポイント!
第5回 :プレゼン上手を知る・斬る(その4)
協力:プレゼン忍者太影こと中村武弘(なかむら・たけひろ)先生
[三重県教育委員会事務局研修分野研修支援室主幹兼研修主事]
太影、復讐の刃を受ける!
先生
現場の先生方の実践力をいかに高めていくかを最重視した研修のあり方を説き、その研修実施にあたる有言実行の人。
三重県内全域はもとより、全国を股にかけて活動するその神出鬼没ぶりに、いつしか人は中村先生を「プレゼン忍者太影」と呼ぶようになった。
いよいよ今回で最終回となる「プレゼン上手を知る・斬る」。今回、プレゼン斬りの刃を受けるのは、他でもないプレゼン忍者太影先生その人であります。
無謀にも、これまで多くのプレゼン名人を斬りまくってきた太影先生。その報いを受ける日がついに訪れたのです。太影先生を斬って溜飲を下げるべく刺客に名乗りを上げたのは、前号、前々号で太影先生が刃を向けてきた三宅貴久子(みやけ・きくこ)先生(岡山市立津島小学校)と深井美和(ふかい・みわ)先生(富山市立熊野小学校)のお2人。
三宅先生は魂を鍛える授業で知られる忍者「魂風」、深井先生はお米プロジェクト実践で知られる忍者「米風」と、それぞれ“プレゼンくのいち”として名を馳せる2人の刺客の前に、太影先生の運命はいかに?
さて、今回のプレゼンの舞台は、さる9月23〜25日の3日間、徳島大学で開催された日本教育工学会第21回全国大会です。
太影先生はこの学会の最終日に行われた課題研究発表の中で「デジタルコンテンツを活用してわかる授業をつくるための教員研修カリキュラムの作成」と題したプレゼンを行いました。
まさに太影先生の本業ど真ん中のテーマがどのように語られ、またそれを2人の刺客がいかに斬るか、1年間にわたるプレ斬りの最終章、いよいよ開幕です!
何はともあれ
立ち位置表明
▲いつになく緊張の面持ちの太影先生。パソコン不調からくる不安なのでしょうか?
太影先生!
今日のお題は……?
米風こと深井先生)あれ……? 太影先生、いつもならプレゼンの最初につかみのネタで一気に聞き手を引き込んじゃうんだけど……。
魂風こと三宅先生)そうだねぇ。15分しか時間がないんだし、ウケ狙いで時間を使う必要はないけど、「今日はこれこれを伝えに来ました!」っていう熱いものがなくて、淡々と始まった印象かな。
米風)学会だからお笑いネタを自粛した……ってわけじゃなさそうだし、ちょっと先行き心配なスタートですね。
魂風)うん、ちょっと心配。がんばれ太影先生!
日本教育工学会には、教育工学にたずさわる専門の研究者はもちろん、現場の教師や学校経営・運営にあたる立場の人、関連業界の社員まで、実に幅広い参加者があります。そのため、太影先生は登壇するやまず始めに、自分の(あのべらぼうに長い)肩書きが実際にどういったミッションを持ち、それをいかに果たしているのかを簡潔に説明することからスタートしました。それは、学校内外における教員研修の立案・実施にわたる支援と、そのための教材開発などです。
こうして自身の業務の方向性を示した上で、今回発表する研究の概要が提示されます。研究の目的とその方法、分析対象として取り上げた授業の教師とその生徒についての属性情報、さらに分析に用いた先学の手法の提示と続きます。
今回はインターネット上で公開されているデジタル教材「Let's俳句ing!」を使用した授業を行った中学校の異なる2学級を対象に、その授業をVTRによる振り返りである「授業カンファレンス」の手法で分析するとともに、生徒に対するアンケートを通じて、その受け止めについて掘り下げていくというものです。
先手言い訳の妙技
見たかった!
知りたかった!
魂風)うーん。パソコン不調だったんだねぇ。ちょっと準備不足もあったのかな。
米風)話を途切れさせずに続けてるのが太影先生のすごいところだけど、さすがにちょっと動揺してるみたいな気も……。
魂風)研究の分析対象になった授業だから、できれば見たかったけど、それがないならないで、研修に伴うその前後の変化について、もう少し具体的な説明が欲しかったところだわね。
米風)そうですね。授業をされた2人の先生についての情報も少なかったので、2人の違いが一体どうして出たのか、聞き手には分かりにくかったのが残念です。
どういった研究手法を採るにせよ、まずは研究対象ありきの話。そこで太影先生は、この後の分析でキーになる授業のひとこまをパソコン上の動画ファイルで紹介しようと試みました。 ところがどうやらパソコンが不調の模様。それを敏感に察知した先生、すかさず予防線を張ります。
「学会も3日目最終日を迎えて、パソコンも少々お疲れ気味なんですね。もしもうまく再生できませんでしたら、そのときは私の口上で説明させてください」
聞き手の気をそらさず、しかもツッコミをうまく回避する、この辺り、さすが百戦錬磨のベテラン忍者ならではの味です。
惜しまれるのは、心配が的中して実際のVTR画像が見られなかったこと。この後に展開される分析を、実感を持って受け止めるためにもぜひ見たいシーンだっただけに、聞き手としても残念に感じるポイントでした。