プレゼン指導 ここがポイント!
第4回 :プレゼン上手を知る・斬る(その3)
協力:プレゼン忍者太影こと中村武弘(なかむら・たけひろ)先生
[三重県教育委員会事務局研修分野研修支援室主幹兼研修主事]
圧倒的な「物証」の激流
その攻めが佳境に入ると、三宅殿は、妥協なき実践の中で、手を抜くことなど考えもせず夢中で活動に励む子どもたちの姿をおもむろに、かつ大胆に見せていく。
そう。三宅プレゼンの極意は、キビキビと嬉々として活動する子どもたちの作品や写真だ。教師も子どもも余すところなくやりきったという実践の生の姿が、聞き手の前にこれでもかとクロスしながら飛んでくるのだ。これぞ人呼んでX攻撃!
妥協のない実践の姿は、理屈抜きで聞き手の胸を打つ。ここでも三宅殿は声なき声でまた我々を叱咤するのだ「エースをねらえ!」と。(あれ? 作品が違っちゃったかな?)
▲プレゼンが佳境にはいると、その物量攻勢は一気にピークに。子どもたちの学びの成果は、もはやシートをはみ出す勢いだ。
LaLaプロジェクトの紹介をはさんで、プレゼンはいよいよ本編へ進みます。この実践はそのLaLaプロジェクトに即したもののはず……なのですが、その直後に示される研究構想図はこれも立体的かつ重層的な構造を持ったものになっています。先のプロローグがなければ、ここでノックアウトされていたかもしれませんが、会場の聴衆はすでに三宅先生を信じてついていく覚悟を決めているようです。
ここから先はまさに物量攻勢。動画の中で1年前の自分の作文について客観的に話す子どもたちのようすや、プレゼンシートからはみ出さんばかりに詰め込まれた子どもたちの文章、文章……。
圧倒的な「物証」を前に、聞き手は抱えきれないほどの「何か」を全身で受け止めることになります。
高い峰は厚い地盤の上にそびえる
▲実践のシリアスさそのままに、この日は厳しい表情を崩さなかった三宅先生。笑顔も見たかった……。
聖域なしは、怖いものなし
三宅プレゼンの何が一番感動を呼ぶのだろうか。それは「こんなこと言っていいの?」と聞き手が心配になってしまうほどのことを迷わず断言してしまうことだ。「ソフトの製品発表会でやっている実践紹介なのに、ソフトなんてどうでもいいと言い切ってしまう」 そんな三宅殿の痛快なふるまいが、聞き手に忘れ得ぬ印象を残すのだ。
細部の内容を心に残すより、物量と自信あふれる語りでトータルな凄みを認識させる。聞き手の心の中で何かを爆発させるのが三宅流秘術。
ところが一緒に食事などしてみると、その細やかな心配りに思わずうならされてしまう。忍びの術でのぞき見たところ、子どもたちへの日々の指導にも実はこの細やかさが行き届いている。だからこそプレゼンで見られるような「スゴイ」実践が成し遂げられるのに相違あるまい。
もはやノックダウン寸前の会場を見渡した三宅先生は、ここで実践のまとめに入ります。先の研究構想に負けない密度の授業設計、それを裏打ちするルーブリックとその定義。これほどの実践の根幹に位置するルーブリックが、子どもたちの参加の下に作り上げられていることに感嘆の声が上がりました。ビジネスの世界で言う「プラン・ドゥ・シー」の円が見事に構築され、さらにそれが子どもの側、教師の側でそれぞれの好循環を生み出しています。
ともすれば机上の空論と受け止められがちなこうしたくだりが、抵抗なく受け止められているのは、やはりここまでの「物証」の積み上げゆえなのでしょうか。
プレゼンの最後に、LaLaプロジェクトの目的の一つでもあったはずの作文ソフト『ひらめきライター』に触れる三宅先生。その有効性を認めつつも、道具は道具という潔いほどの割り切りには、製品発表会の場であることを忘れさせられてしまいました。