プレゼン指導 ここがポイント!
第4回 :プレゼン上手を知る・斬る(その3)
協力:プレゼン忍者太影こと中村武弘(なかむら・たけひろ)先生
[三重県教育委員会事務局研修分野研修支援室主幹兼研修主事]
太影、最強の敵に挑む!
先生
岡山県岡山市立津島小学校教諭。「子どもの読み書き活動と言語意識についての調査研究(LaLaプロジェクト)」に参画し、「書くこと」を通じた思考力の育成に重きを置いた実践に取り組んできた。子どもたち自身が参加して作成するルーブリックを手がかりに、できるようになったこと、まだ足りないこと、これから頑張ることについて文章化していくという「振り返り」を伴う授業で大きな成果を上げている。
第3回目を迎えた「プレゼン上手を知る・斬る」。今回、プレゼン忍者太影先生が挑むのは、その優れた指導力と強力な実践推進力で知られている岡山市立津島小学校の三宅貴久子先生です。
あの太影先生をして「なんて命知らずな企画なんだ……」と思わず絶句したという、連載史上最高のカードと言えましょう。
三宅先生の最近の活動としては、お茶の水女子大学の研究プロジェクトである「子どもの読み書き活動と言語意識に関する調査研究(LaLaプロジェクト)」への参加があります。書くことによる子どもの「鍛え」に以前から取り組まれている三宅先生にとっては、その成果をまとまった形にするよい機会だったこととお見受けします。
さて、今回のプレゼンの舞台は、さる5月28日に行われた『ジャストスマイル3@フレンド』の製品発表会です。この中で三宅先生は、上越教育大学の高本條治(たかもと・じょうじ)先生との対談という形で「考える力、ことばの力」についてお話しされました。
対談とは言え、基本的にはお二人それぞれがプレゼンを行い、それを最後に対話の中で昇華していくという体裁のものだったため、ここではその内、三宅先生のプレゼン部分に絞って見ていくことにしましょう。
さて、プレゼン忍者太影は返り討ちを逃れることができるでしょうか!?
重厚なるプロローグ
▲プロローグのはずの過去実践が、大きなテーマと厚みのある構成で聞き手を圧倒する。
苦しくたって悲しくたって
三宅殿の風ぼうは元バレーボール選手の三屋裕子殿にどこか似ている。もちろん似ているのは顔だけではなく、本当はそのファイトやガッツこそが共通点なのかもしれない。実践家としてNo.1のアタッカーであり、学級というチームを束ねる名コーチでもある。相手の胸ぐらをえぐるような強烈アタックとその発言の破壊力には定評のあるところだ。
一度攻撃が始まると、機関銃のように実践にかかわるさまざまな情報、子どもたちの成長のありさまが息つく間もなく飛んでくる。
「ぼやぼやしてたら聞き逃すで!」「早う、ボールを返さんかい!」「おらおら!」「立ち上がれ!」
口に出すわけでもないのに、プレゼンの端々からそんな叱咤が聞こえてきそうな気がするのだ。
高本先生の短歌をまじえたプレゼンを枕に、いよいよ三宅先生のプレゼンがスタートします。最初にスクリーンに映し出されたのは、津島小学校から望む岡山市の全景。彼方には来年開催される岡山国体のメイン会場が見えています。
続いて紹介されたのは、三宅先生の前任校での実践である「Webサーバーを利用した本作り」です。あえて前任校での実践を取り上げるあたり、この部分が本題のプロローグであることを感じさせます。
ところが、始まってみるとその実践の内容の濃さに驚かされます。「本作り」はあくまでアウトプットのひとつの形であって、取り組みの中心的なねらいは「自己の生き方を考える」ことにありました。図解される緻密な授業設計や、ゆるぎない必然性に裏打ちされた方法論の選択に、会場は息をのみました。
共同学習の体裁をとったこと、本作りというアウトプットを選んだことなど、それぞれが確信を持って力強く語られていきます。
前段の締めくくりには、この実践で学んだ子どもたちのコメントが紹介され、その成長が実践の確かさを強く印象付けます。
プロローグであるはずの過去実践の紹介で、すでに聞き手は三宅先生の実践力に感嘆し、深い信頼を抱いているかのようです。