IT活用講座

プレゼン指導 ここがポイント!

第3回 :プレゼン上手を知る・斬る(その2)
協力:プレゼン忍者太影こと中村武弘(なかむら・たけひろ)先生
[三重県教育委員会事務局研修分野研修支援室主幹兼研修主事]

割り切りとメリハリ

スターの笑顔

▲悠々として楽しむ。プレゼンは度胸だと教えてくれるスターの笑顔だ

 

スターは、小さいことを気にしない

今回は5分という超短期決戦だったが、そもそもプレゼンでは、すべてを伝えることはできないもの。スターはそれを心得ているので、小さいことはバッサリ切って、ここぞというポイントをしっかり説明する。

結果、他人のツッコむすきを与えてしまうこともあるのだが、慌てたりとぼけたりすることもなく、堂々と笑顔で受け流してしまう。これが許されるのもスターの特権!?

かように大胆さが魅力のスター。それなら細部は大ざっぱなのかといえばさにあらず。プレゼンシート作りのうまさも目立った。子どもたちやその作品と実践のポイントとをひとつの画面で効果的に組み合わせることで、聞き手に具体的な授業のイメージを持たせることに成功している。スターは大胆かつ細心ナリ。

スターのプレゼンシート

実践の重要ポイントとその成果が現れた子どもたちの作品とがオーバーラップされたプレゼンシート

「コミュニケーション力を育てる」という実践の狙いを、シンポジウムの全体テーマと関連づけて紹介しながら、「話すことだけでなく、人の話を聞いて、分からないところを聞き直せる、そういう力を目指しています」と深井先生。

 

先の2人の発表者が、それぞれ文章を書くこと、図(概念図)を描くことを通じたコミュニケーションについてプレゼンを行ったことをうけて、自身の実践が「話すこと・聞くこと」に主眼を置いたものだということと、テレビ会議を利用したものであることを明示しました。

続くプレゼンシートに書かれた「鍛え」の方針については「お手元の資料をご覧ください」と、あっさりパス。このあたり、5分という短い時間の中で、何を語り何を捨てるかをハッキリさせた潔さを感じます。

そして画面は「ドラえもん」のアップに。アニメの主題歌を口ずさみながら、2年生の子どもたちをコミュニケーションに取り組ませるためには、まず「伝えたい」気持ちにさせることが重要で、そのためにこうした仕掛けが有効だったことを強く印象づけました。

さらに、実践のポイントであるテレビ会議の活用について、1年生からの持ち上がり学級であることから、お互いに分かり合ったクラス内での相互評価だけでなく、まったく知らない他校の子どもたちに評価されること、その相手に分かるように伝えることの大切さとその効果などをかみくだいて説明します。

実践のポイントとそれに関連した成果とが、ひとつのページにあわせて表示されるようなシート作りも大変分かりやすいものでした。

こうした実践の要、山場には説明を惜しまないことが、さらに聞き手の印象を際立たせているようです。

一を語り十を知らしむ

スターは、一人でやるのがキライ

我田引水ではないけれど、他人の発言を上手に引用して自説の補強をしてしまうのもスターの得意技。今回はディスカッションということで、研究者のツッコミを受ける場面もあったが、ピンチになると開き直って相手にゲタを預けてしまう。このように周囲の人たちの力をうまく使うことに長けているのも、またスターの証明だろう。

「使い上手」「やらせ上手」はプレゼンだけの話ではなく、実践の取り組みにも言えること。深井殿は、相手の気持ちを動かすすべを知っている。そして相手は、気持ちを先に動かされてしまい、動いた自分の気持ちに従って行動するから、あたかも「自分でやっている」気持ちになってしまう。スター恐るべし。

同じ何かをやりとげても、それを人にやらされたか、自分でやった(と思う)かによって、生まれる感動は天と地ほど違ってくる。スターとは感動を生む才能のことなのだ。

また、このパネルディスカッションが、シンポジウムの終盤に行われたこともあって、プレゼンの要所で、シンポジウムのそこかしこで語られた言葉や考え方に「振る」ことが多く見られたのも深井先生のプレゼンの特徴でした。

「誰々先生がこう仰られていたように……」という形で、他の人の話にひもづけていく話法は、限られた時間のプレゼンの内容を大きく広げると同時に、シンポジウム全体の中に、自らのプレゼンを位置づけていく作業でもあります。そのため、深井先生のプレゼンは、シンポジウム全体の収穫と共に、聞き手の中にいっそうその内容を定着していくことになるのでしょう。

 

プレゼンの流れ
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。