プレゼン指導 ここがポイント!
第2回 :プレゼン上手を知る・斬る
協力:プレゼン忍者太影こと中村武弘(なかむら・たけひろ)先生
[三重県教育委員会事務局研修分野研修支援室主幹兼研修主事]
ピンチの後にチャンスあり
4)石原流は義経流!?
自分の目指す「子どもたちの情報活用能力を引き出す活動」を推進するためにはたくさんの敵がいる。その敵は、同僚、管理職、教育委員会、保護者など、状況によってさまざまだ。
その敵の一角である保護者や同僚をどのように味方に引き込み、目指す方向へ進んでいくのか、このプロセスを展開することが石原プレゼンの決め技。自らを「四面楚歌」の状況に追い込んだ上でそれを打破するのだ。
義経好き・判官びいきの日本人にはたまらない勇壮な戦法だが、同時に危険な方法である。それをあえて使う勇気とセンスを持っているのが石原先生だ。
プレゼンの手法としては誰にでも使える方法ではないが、この問題解決のプロセスこそ、実は我々が学ぶ大切なことなのである。目の前にはいろいろな問題があるけれども、必要と思う実践のためには、ひるまず、退かずに頑張るという石原先生の熱い情熱を感じ、胸に刻む場面なのだ。
話題はここで、ここまでのスピード感あふれる実践の紹介に、自ら急ブレーキをかけるかのように、ネットのネガティブ面へと転換します。
ここでの見出しは「コインの表と裏」。ここまで語ってきた実践のパワフルさに裏打ちされた「表」、すなわちプラス面に対して、それに匹敵するほどのコインの裏、つまりマイナス面があることを、自らこれでもかとばかりに列挙4)。そして聞き手の中にわき上がってきた危機感をバネにして情報モラル指導の必要性・重要性を説いていくのです。それも理念だけでなく、具体的な考え方や方法論にまで踏み込んだ解説が行われていきます。
これはある意味、とてもリスクのある展開です。というのも、あおった危機感に見合うだけの説得力ある対処法やその実践を示せなければ、マイナスの印象が勝ったまま終わってしまう可能性があるからです。
しかし石原先生は、あえてこうした方法をとり、そして聞き手の中に大きな印象を残すことに成功しています。
子どもたちに語らせる
5)フツーの先生は引いちゃうよ!
石原先生は具体的な指導方法をイメージで提供しているが、普通の教師は、前半の「すごい」イメージが強すぎて引いてしまうのが心配。
天才の天才たるゆえんは、他の人も自分と同じようにできると思うところにある。ところが、天才の道具やカリキュラムを、凡才はそうそう使いこなせない。
なぜなら、考えさせる授業をしたことがない先生には、どうやって子どもたちを指導していいか分からないからだ。
また、携帯40台やPDA40台を使った授業は、自校ではできないと聞き手に思わせてしまう。たくさんの道具を持ってくることは、石原先生だからできるんだと引かせてしまう。
本当の目的は、情報教育の授業を広げることでは?
そしてプレゼン終盤、石原先生は実践の様子をビデオで詳細に見せていきます。あまりにインパクトのある言葉の連発で、ともすれば聞き手に芽生えそうな
「これホント?」
「子どもたちはどう受け止めてるんだろう?」
といった疑念に答えるかのように、生き生きと学ぶ子どもたちの姿が映し出されていくのです。石原先生の言葉を裏打ちする確かな実績が、これらの授業ビデオを通じて、何よりも雄弁に語られていきます。
もうひとつ目を引くのは、実践に登場する数々の情報機器。子どもたち全員が携帯電話を手にする。PDA(携帯情報機器)を使いこなす5)。その華々しさは、インフラや実践経験に恵まれない聞き手の目には、まぶしく映るほどです。
最後に、こうした実践の手始めとして利用できる教材の入手法が簡単に紹介され、石原先生のプレゼンは終了となりました。