プレゼン指導 ここがポイント!
第1回 プレゼン指導、ここを間違えていませんか?
協力:プレゼン忍者太影こと中村武弘(なかむら・たけひろ)先生
[三重県教育委員会事務局研修分野研修支援室主幹兼研修主事]
プレゼン指導は何のため?
デジタルカメラやプレゼンテーションソフトはあくまで「道具」。プレゼン指導本来の目的を絶えず確認しながら進めていこう。
すっかり一般的なものになったプレゼン指導。ところで、その目的はそもそも何だったでしょうか。
プレゼンテーションには、実に多くの学びの要素が含まれています。テーマの選択によっては、ほぼあらゆる教科の中で実践することができるでしょう。
とは言え、やはりプレゼンテーション指導の実践に一番適しているのは国語です。「話すこと・聞くこと・書くこと・読むこと」という国語の要素のほとんどすべてがプレゼンには含まれているからです。
このことからも分かるように、プレゼンテーション指導の目的も多くの部分で国語のそれと重なると考えられます。
まとめてみると、
などを総合的に育てることだといえるでしょう。
最近では、各種の情報機器がプレゼンテーションに利用されるようになり、子どもたちのプレゼンテーションも、飛躍的に表現力豊かなものになりました。
ところが、その豊かな表現力がかえって本来のプレゼン指導の目的を見失わせてしまうこともあるようです。
デジタルカメラやプレゼンテーションソフトをいかにうまく使いこなして「見栄えのいいプレゼンテーションシートを作るか」が中心になってしまっているような指導がその典型です。
「いや、そんなことはない」と仰る先生も多いことでしょう。
しかし、子どもたちにはその指導の目標がしっかりと伝わっているでしょうか。
パソコンをはじめとする新しい道具が、そのうわべの面白さや目新しさだけで子どもをとりこにする傾向がある中で、先生方がハッキリとした指導の目標を持ち、同時にそれを子どもたちが分かる形で伝えていかなくてはならないということを、ぜひ再確認してください。
書かない指導 言わない導き
プレゼンテーション上手になるには、いくつもの「コツ」があります。
そのコツを効率よく子どもたちに教えていくことが、子どもたちのプレゼンテーションを素晴らしいものにする近道……そんなふうに考えていないでしょうか。
同様に、子どもたちに、ビジネス用に作られたプレゼンテーションソフトの操作法を微に入り細に入り説明するような授業も目にします。これもまた「コツ」を直接教え込むのに似た指導に思えます。
子どもたちにとって、自分の考えをまとめ、それを他人に分かりやすいように伝えるというのは未知の経験です。その能力を身に付けていくには、「あること」が欠かせません。
そうでなくとも、限られた時間数の中で行う授業では、ついつい結論を急ぐ指導に走りがちです。けれども心しておきたい、ベテラン教師の言葉があります。
「子どもたちは、思うほどあなたの言葉を聞いていないよ」
これは決して、子どもたちがふまじめであるとか、先生の力が足りないとかいう意味ではありません。
子どもたちに響く言葉は、子どもたちがそれを聞く準備を整えた時に届く、という意味なのです。
本当に大切なことは、あえて書かない、言わない。それと言わずに子どもたちを導き、「コツ」との出会いを演出する。そんな指導のためには、どうすればいいのでしょうか。