プロに聞く 調べ学習のヒント
第3回 新聞編集者が語る 編集の極意
少年写真新聞社 編集部
短くする方が難しい! 文章をスリムにダイエット
タイトルも人を引きつけるための重要なポイントだ。『学校コンピュータ』の場合、メインタイトルの字数は最長でわずか13文字。これは遠くからでも読めるようにと、文字のポイント数(大きさ)を大きくしているためだ。
“この字数で全体を表現するのは難しいが、短くすることで、より洗練されたキャッチコピーに仕上がる”と河野さん。
「言葉のキレの良さをもっとも大切にしています。全体をスパッと言い切ること。また、『○○ってなんだろう?』という疑問形にする方法もあります」
サブタイトルは30字前後で、メインタイトルをより詳しく説明したり、表現できなかった部分を補足する。ここで気をつけたいのが、同じ言葉がダブらないようにすること。短いセンテンスの中で、できるだけ多くの情報を伝える努力が必要なのだ。
本文についても、簡潔さが重要なポイントとなる。理解しやすい文章に仕上げるためには、起承転結の3節でまとめ、無駄を省くことが大切だ。
河野さんは「長々と説明するよりも、短くまとめる方が難しい。決まった字数の中で表現するためには、言葉の取捨選択が必要になりますから、自然に読みやすい文章になります。子どもたちが媒体づくりをするときは、あらかじめ字数を制限してはどうでしょうか」と提案。 一定の制限の中で、いかに表現するかを考える過程で、子どもたちの文章能力が向上することは間違いない。
複数人で内容をチェック 校正作業で伝える側の責任を理解
写真の配置が決まり、タイトルと本文を作成したら、編集作業もいよいよ最終段階。ここで、怠ってはならないのが写真や記事の意図がしっかりと表現されているか、誤字脱字がないかをチェックする「校正作業」だ。
少年写真新聞社には校正の専任者がいるが、授業では制作した子どもたちみんなで見直す時間を設けるようにしたい。
「人によって見る場所が違いますから、数人でチェックすることをおすすめします。授業で印刷物を制作するときも、すぐに発行してしまわないで、一度はみんなで間違い探しをするといいでしょう」と河野さんは教えてくれた。
最近はコンピュータのデスクトップ上で完成に近い形を確認できるようになったが、やはり印刷して確認するのがベター。モニター画面では、全体像がつかみにくい上に、細かいミスに目がいかない。また、どうしても一人ずつ確認することになるので時間もかかってしまう。
多くの人を対象にするメディアにとって、間違いのない情報を提供することは絶対条件だ。しかし、たとえ相手が一人であっても、誤った情報を伝えることで、気づかないうちに損害を与えてしまう可能性があることに変わりはない。校正作業は子どもたちに“伝える側の責任”を教える絶好の機会になるのではないだろうか。
複数人で内容をチェック 校正作業で伝える側の責任を理解
取材の五箇条
一、メインになる素材を、トップに大きく使おう
一、写真配置はストーリーを意識しよう
一、別テーマは囲み枠などでまとめよう
一、見出しや文章は短く、簡潔に
一、紙面をプリントアウトして、みんなで確認しよう
今回は編集作業に限定して話を聞いたが、河野さんは、編集作業はすでに企画段階から始まっていることを強調する。
「どんなテーマで、何を取材するかを決めた段階で、絵コンテ(紙面をイメージしたイラスト的なもの)を書きます。大げさに言えば、この絵コンテさえしっかりしていれば、後は何とかなる(笑)。逆に曖昧だと、編集段階で写真の撮り直しや再取材が必要になり、大きなロスを生むことになります」
少年写真新聞社に入社以来、8年間で約100号の『学校コンピュータ』を手掛け、いまやベテランの河野さんだが、最初の2年間は何をメインに取り上げるかという入り口の部分で苦労をしたという。
「細かいテクニックは確かに必要ですが、もっとも大切なのは作業に入る前に、しっかり考え、全体のイメージを明確にすることだと思います」
IT関連の話題を、子どもたちにも理解しやすく紹介している河野さんは、 「『写真ニュース』を見ることで、子どもたちが『これはおもしろいな、自分で調べてみよう』と思ってくれるような紙面づくりを目指しています。その小さなきっかけが、子どもたちの将来につながれば、こんなにうれしいことはありません」と微笑む。
子どもたちに対する、このあたたかいまなざしと情熱が、河野さんの一番の「編集の極意」なのかもしれない。
(株)少年写真新聞社 『写真ニュース』
1954年の設立以来、同社は、子どもたちにとって関心のある出来事や情報をわかりやすい記事で紹介した『写真ニュース』をメインに出版している。『学校コンピュータ』のほかにも、給食や保健などあらゆるジャンルを網羅しており、現在15種類。
少年写真新聞社ホームページ:http://www.schoolpress.co.jp/
情報教育向けに最新のデジタル機器や技術の紹介をする『学校コンピュータ』編集記者。企画立案から取材・編集を担当する。入社から8年間で100号の制作を手がけた。
取材・文/元木哲三 撮影/前川紀子