プロに聞く 調べ学習のヒント
第3回 新聞編集者が語る 編集の極意
少年写真新聞社 編集部
これまで2回にわたって、『総合的な学習の時間』で役に立つ「企画」と「取材」の極意を紹介してきた。自分たちでテーマを決めて、しっかりとリサーチを行ったら、次はいよいよ集めてきた情報をまとめる編集作業に入る。 プレゼンテーションの際に、いかに注目と関心を集められるかは、この編集の過程にかかっていると言っても過言ではない。
そこで第3回目は、掲示用写真ニュース『学校コンピュータ』を制作する、少年写真新聞社・編集部の河野英人さんに、編集の基本と情報を効果的に伝えるためのテクニックを語ってもらった。
メイン写真でアイキャッチ! Zの法則を覚えておこう
校内の掲示板でおなじみの『写真ニュース』。時事問題、理科、保健といった身近で興味深い話題をわかりやすく紹介した記事に、子供たちはつい足を止め見入ってしまう。
『写真ニュース』が雑誌やパンフレットなどのメディアと異なる点は、読者である子どもたちの興味を“ひと目”で引きつけなければならないことだ。そのため、編集作業では迫力ある写真がもっとも重視される。
情報教育向けに、最新のデジタル機器や技術を紹介する『学校コンピュータ』の編集を手がける河野さんは、
「トップにはインパクトのあるメイン写真を大胆に使用します。これが、いわゆる“アイキャッチ”になり、子どもたちは思わず記事まで読んでしまう。場合によってはメイン写真1点だけで勝負することもあります。重要なものは大きく、それ以外はコンパクトにまとめることで、紙面にメリハリをつけることが大切です」
と第一の極意を語ってくれた。
取材の過程で撮影した写真は思い入れもあるため、すべてを紹介したいと考えるのが人情。しかし、同じ大きさの写真が並んでいても、人の目を引きつけることはできない。
河野さんは、「テーマをズバリと表現する写真をメインに選んだら、後は思い切って切り捨てる勇気が必要です」とアドバイスする。
『学校コンピュータ』ではメイン写真を左上に配置することが多い。
広告やポスターなどを見るとき、人間の視線は左上から右上、左下、右下と「Z」型に流れる。紙1枚で表現を完結させるという点でポスター制作に近い『写真ニュース』の場合は、もっとも表現したい部分を左上に置くのが効果的なのだ。
壁新聞や、大型スクリーンでプレゼンテーションするための資料を作成するときも、このZの法則が参考になるはずだ。また、特に見せたい順序があれば、番号を付けたり、矢印で誘導するといいだろう。
写真配置でストーリーづくり 別テーマは囲み枠などで
メイン写真で関心を引いたら、次はそれを補足する比較的小さな写真を配置する。『学校コンピュータ』で使用する写真点数は、多くても8点程度。それ以上多くすると、読み手の意識が分散されてしまうし、写真自体も小さくなるので見づらくなってしまうからだ。
写真の配置で注意する点は、視線の流れに沿って、ひとつのストーリーを作ること。 「時系列で並べたり、大きな視点から徐々に詳細に説明していくなどの工夫で、読者を自然に誘導してあげることが大切です」 と河野さん。
ただし、ストーリーに従ってレイアウトを組むと、どうしても切り捨てなければならない情報が出てくる。もし、メインテーマとは異なる情報を付加したい場合は、囲み枠にするのが有効だ。
「例えば、キーボードをテーマにした記事では、新しいタイピングソフトをトピック的に紹介しました。関連した情報を上手に伝えれば、メインテーマに対する理解はグッと深まります」
さまざまな情報が入り乱れてしまわないよう、メインテーマは物語としてまとめ、別テーマは独立させて紹介する。あくまでも、全体の流れと、わかりやすさに気を遣いながら、レイアウトを進めることが大切だ。
また、細かい点だが、写真にはすべてキャプション(写真の説明)を入れるのが基本。写真は一見して内容が理解できるものを採用することが大事だが、一文を添えることで、伝えたい内容がより明確になる。写真とキャプションだけでは説明できないときは、イラストを挿入することもある。河野さんは、コンピュータなど電子機器の仕組みや中身を説明する際に、図解を用いることが多いという。