プロに聞く 調べ学習のヒント
第2回 TVディレクターが語る 取材の極意
テレビ東京 報道局
「総合的な学習の時間」の授業を進めていくうち、子どもたちは教室から飛び出して、街や工場で現場をリサーチしたり、専門家に話を聞きに行くといった場面が出てくるはずだ。 学校外の一般社会で、子どもたちが自由に学ぶ機会をもつのは素晴らしいことだが、一方で「外部に授業の協力を求めることの難しさ」があるのではないだろうか。
第2回目は、報道特別番組の企画・制作を担当する、テレビ東京のディレクター・川名真理さんに、取材をするにあたっての姿勢とノウハウを語ってもらった。
企画の段階から取材準備は始まっている
社会、経済、政治の“今”を、映像を通して伝える報道特別番組。視聴者に対して、いかに説得力を持って訴えることができるかどうかは、的を射た対象に、どれだけ綿密な取材ができるかにかかっているといって過言ではない。取材の質は、番組の成否を決める重要なポイントだ。
(1)番組全体のテーマを決める
(2)企画テーマに即した情報を
リサーチし、 企画書を作成
(3)テーマに合った取材を開始する
(4)構成を立てながら大まかに編集
(5)スーパーやナレーションを入れる
オンライン編集
(6)完成後、オンエア
番組ディレクターとして全国を飛び回る川名さんに取材の極意を伺う前に、まずは報道特別番組がオンエアされるまでの制作過程を見てみよう。
実際の取材は(3)から始まるわけだが、(1)〜(2)の段階にも取材の準備作業が含まれている。
企画段階では“今何が面白いのか、視聴者が知りたがっていることは、あるいは伝えるべきことは何か”を考え、新聞、インターネット、識者へのインタビューなど、あらゆる情報源から調査を進めていく。そして、大まかな企画のテーマが決まったら、テーマに即した取材対象をリストアップする。
この時に気をつけなければならないのは、対象のバラエティ性を考えておくこと。 川名さんは「同じ系統に偏らないことが大切です。例えばIT特番を例に挙げると、インターネット、携帯電話、ハードウェアなど、情報技術に関するさまざまな分野を取りあげる必要があると考えました」と語る。
また、テレビ番組であるため、映像にしたときの面白さを考慮しておくことも必要だ。
「画面を通して、臨場感や息づかいを表現できるのがテレビの特長のひとつですから、どんなシーンが撮れるのかを考えて、取材対象を絞り込んでいきます」
これは写真を使ったプレゼンテーションでも同様で、より効果的な発表をするために、どんな写真が振れるのかを事前に想定しておくことは重要なポイント。場合によっては、下見に行くことも有効だ。
取材の許諾を得るときは誠意ある姿勢で臨むこと
取材対象が決まったら、先方に取材の許諾を得なければならない。いわゆる“アポ入れ”の作業だ。この時に相手を説得するためには、取材の趣旨を明確に伝えることが重要。
「番組のコンセプトや、取材のねらいがあやふやでは、相手に不信感を与えてしまいます。連絡をする前に、自分はこの取材を通して何を知りたいのかを、もう一度確認しておくといいでしょう」
取材対象者にとって、取材を受けることが広報活動につながるといった何らかのメリットがある場合、比較的許諾は得やすい。しかし、報道番組という性質上、テレビに出ることがデメリットになるケースも少なくない。
「介護をテーマにした番組の取材では、取材を断られるケースがたくさんありました。その時は1週間に1度、ポストにお願いの手紙を届けたりもしました。何回か通って、ようやく取材OKの返事をもらえたときは、うれしかったですね」
一見華やかに見えるテレビ制作の舞台裏だが、実はこうした地道な活動が番組を支えているのだ。
授業のための取材を依頼する場合は、相手のメリットになる可能性は低いため、面倒に思われることも少なくないだろう。だからこそ、“取材に協力していただいている”という謙虚な気持ちを忘れてはならない。
川名さんの実体験からもわかるように、アポイントを入れる際には、相手に取材の趣旨を明確に伝え、誠意と熱意を持ってお願いする姿勢が大切なのだ。