新学習指導要領 〜教育新動向〜

市ぐるみで進める情報教育への取り組み 
山形市総合学習センター 指導主事 菅野徳明(かんの・のりあき)先生に聞く

変わり続けるための人づくり

山形市総合学習センター

山形市総合学習センター全景。教育・文化・情報・科学に おける市の拠点だ。

徹底的かつ継続的な調査研究は、授業だけでなく教員研修にも影響を与え始めた。

特にその基本体制が確立したここ数年は、テーマ性を重視した研修の試みが進められている。「コンテンツ」をテーマに掲げた平成16年度は、学校現場が陥りがちな受動的コンテンツ利用を主体的なものとするため、受講者が実際にコンテンツ制作に取り組む研修を開催。授業者のコンテンツ利用に対する視野を広げることが当初の目的だったが、コンテンツ制作自体を授業に取り入れる実践例も多く見られ、またそれが成果を上げているという。この波及効果こそが、菅野先生の意図したところであろう。こうした成果をふまえ、平成17年度は情報の「共有」をテーマに研修が実施されている。

テーマ性の一方で、その対極にあるような研修もまた試みられている。「情報教育開放講座」と銘打たれたそれは、「3つのFree」が特徴だ。申し込みの必要がないという自由、センターへの来所時間が自由、さらには研修内容自体がモジュール化され自由に選択できるというもの。受講者はモジュールごとに完備されたテキストに沿って研修を進め、疑問点や問題については常駐する講師陣からその場でサポートを受けられる。

受講者自身の自発的な課題意識なしには成立しない思い切った研修形態だが、これが大好評。モジュール化された内容に飽きたらず、自らの課題や機械を持ち込んで研修に臨み、講師と一緒に頭をひねる先生も増えているという。

求められる地域一丸

山形市は、パソコンの整備台数などその校内設備の面ではまだ課題を抱えているものの、これらセンターの取り組みが奏功して、先生の情報教育への理解度や実践度は全国的に見ても高いレベルに達している。

今回の取材でも、しっかりとした見通しを持った授業の進め方や、保護者を巻き込んで子どもたちを導き育てる環境を作っていこうとする姿勢が強く感じられた。それは個々の先生、学校はもとより、市総合学習センターの情報教育に対する見識と実践によって支えられているものに違いない。今後情報教育が一層社会との関わりを深めていく上で、こうした大きな枠組みの中で連携・均衡の取れた取り組みを行っていく必要が一層強まっていくのではないだろうか。

▼山形市立東小学校の情報教育実践事例はこちらから!


取材/西尾琢郎 撮影/佐藤貴佳

※本文中の情報は、すべて取材時のものです。