新学習指導要領 〜教育新動向〜
市ぐるみで進める情報教育への取り組み
山形市総合学習センター 指導主事 菅野徳明(かんの・のりあき)先生に聞く
二本の柱を携えて
着任以来、山形市の情報教育全般について、その整備・活性化に尽力してきた菅野先生。その間、常に学校現場との太いパイプを保ち続け、トップダウンではない、市としての一体感ある改革を推し進めてきた。
「常に感じるのは、教育やその環境を情報化していくことの効果やメリットを説明することの難しさですね。それをしっかりと証拠付けていくことで、その普及や一般化にも弾みをつけていきたいと思っています」
菅野先生がこのセンターに着任したのは2001年のこと。それまで情報化や情報教育の専任スタッフがいなかったセンターに、山形県教育センターから異動となったものだった。
「私が着任したことで、初めて行政に窓口ができたんですね。それまでは情報全般について問題や悩みがあっても持っていきどころがなかったのかもしれません。それはもうたくさんの相談が一気に押し寄せてきました。先生方も多くの問題意識を持っていたのです」
そこで菅野先生が推し進めたのが「統合」と「調査研究」だ。統合とは市内各校の情報システム一元化によってどの学校でも一定のレベルで情報化の恩恵に浴することができるようにすること。先生方も異動などに関わりなく、どの学校でも授業に校務に情報システムを利用できることになる。
「それまで山形市では、インターネットの運用ひとつ取っても学校ごとに独自の裁量で行っていたんです。それと先生方が個人で持ち込むパソコンといった要素があいまって、セキュリティ面で少なからず問題を生じていました」と菅野先生。
そこで、市として定めたセキュリティポリシーに沿って教育情報ネットワークの統合を推進。運用面でのルール浸透を含め、2年がかりで達成した。
同時に進めてきたのが学校と子どもたちの実態把握のための「調査研究」である。インターネットや携帯電話に代表される今日の情報環境は日々変化している。その中で教育現場がなすべきことを明らかにする上でも実態を把握することが不可欠との考えでスタートしたものだ。
正しい見立てが導く活性化
▲学校の樹木プロジェクトホームページ
調査研究は、教育研究所に設置する現場の先生をメンバーとする研究員組織を中核にして行われている。初年度には情報教育推進の現状と課題がリサーチされ、以後、それを土台として児童生徒の情報活用能力の実態把握や、各種施策の計画・実施に関わる調査研究が進められ、実践へと生かされてきたのだ。
その成果は教育情報ネットワークのポータルサイトが果たすべき機能、提供すべきサービスやコンテンツの吟味、学校横断的な共同学習の取り組みである「Project on Network」などに結実している。平成15年度に文部科学省の『教育情報共有化促進モデル事業』に参加して実施された『学校の樹木プロジェクト』や、最新の地理情報システムを活用した『学区探検プロジェクト』などはその具体的な事例だ。これらの取り組みは全市的に教師と子どもたちの学習空間を拡大し、情報機器やその技術を道具として使いこなしながら、生き生きと取り組む新しい学びの形を提起した。